威風堂々

春から社会人

祖父のこと

2024年が終わる前にこのことを書いておこうと久しぶりに筆を取りました。

 

今年の7月末、祖父が亡くなりました。

私は子どもの頃から毎年年末年始とお盆に祖父母の家に帰省してきたのですが、2023年の年末に帰省した時は一緒に焼肉を食べに行ったくらいに元気だったので本当に突然の事としか言いようがありません。

5月くらいに検査入院したという話を聞いたのですが、それからあれよあれよと事態が深刻化して3ヶ月でした。入院当初は検査入院と言うだけあって普通に歩いてもいたし、本人も周りも退院したらまた普通の生活を送るつもりでした。

100%成功する医療行為なんてないと思いますが、話を聞くに検査の際にその高くは無いリスク側を引いてしまったらしく、それが直接的な原因だったそうです。

どうやら当初聞いていたより容態がかなり悪いらしいという話を聞き、6月に病院に行った時には会話はできるものの、ICUに入っていて、かなり衰弱している状態でした。もうその頃にはかなり厳しいという話も聞いていました。結局そこで会って会話したのが最後となり、次に対面したのは葬式の前日でした。

 

私は祖父のことが大好きでした。親族で誰が一番好きか聞かれたら祖父だったと思います。

祖父は私にとって自慢の祖父でした。

祖父母の家は和菓子屋をやっていて祖父は和菓子職人でした。昔から祖父母の家に帰省すると、作りたてのどら焼きや桜餅を食べさせてもらったり、年末年始には梱包の手伝いをしたり、私にとってはまさに非日常だったのです。祖父の作るお菓子はとても美味しかったし、店をやっている家というのはなにか特別感がありました。

祖父自身は亭主関白、煙草とお酒と野球とギャンブルが好きというまさに昭和の男という感じでしたが、機嫌がいい時はほんとによく、悪い時はとても悪い、凄くわかりやすい人でした。私はそういうところが人間的過ぎて好きでした。人望もとてもあって職人という言葉が似合う人だったと思います。昔はやんちゃしてたらしいですが、私の記憶にあるのは優しい祖父の姿だけだったのでその話はなかなか衝撃的でした。

 

祖父が亡くなったという報せを聞いて、もうあまり長くは無いとは覚悟していましたが、いざその話を聞くとどうしようもなく気持ちが落ちました。私にとってこれ程身近な人が亡くなるのは初めてだったというのもありますが、この気持ちをどう表現していいのかも分からず仕事も手につきません。

葬式の前日に帰って祖父と対面した時、本当に祖父が亡くなったという実感が湧いてきてここで初めて泣きました。大号泣でした。楽しかったこと、無念さ、色んな感情が一気に大洪水を起こして遺体の前で1時間位は泣いていたと思います。

葬式当日、呆気なく骨になった祖父の姿を見て遠くに行ってしまった感がどこか実感のない話のように感じました。葬儀が始まるとたくさんの方が参列してくれて、その話に祖父が、菓子店が愛されていたことを改めて感じてまた泣いてしまいました。

多くの人に惜しまれて悲しまれて死んで、祖父は本当にいい人生だったんじゃないかと思います。

 

2024年年末、私はこれを帰省して書いています。もう祖父はいないので祖母の家となった家で。

祖父が亡くなった後、営んでいた菓子店は閉店しました。私が物心ついた時からたくさんの思い出がある店が閉まってしまったことは本当に苦しいです。もっとたくさん祖父の作るお菓子を食べたかったです。

あれから5ヶ月が経ち、遺影の中に入った祖父の姿をまだ信じられずにいます。

でも気持ちはだいぶ落ち着きました。

葬式に出たとこがやっぱり1つ気持ちの整理をするきっかけになりました。あれがなかったら未だにどこか実感のないままふわふわと引きずっていたと思います。お別れの場というのは大事だと実感を持って言えます。あれは故人のためと言うより残された人のための場ですね。

私はそんなに生への活力に満ちている訳ではなく惰性で生きているようなどうしようもない人間ですが、それでも祖父の葬儀を見て、私もこれだけ惜しまれて送られるような人間になりたいなと思いました。

当時も言ったんですが、私はあの時、「人はなんのために生きるのか」という陳腐な、何度も当てこすられた哲学の答えを「惜しまれて死ぬため」じゃないかと思いました。

 

まもなく2024年も終わります。あれだけ苦しかった祖父の死も過去のことになりつつあり、時の流れは残酷です。ただ、私はもう少し毎日を大切に生きようとあのとき確かに思いました。別に生きる目標なんてないし、殊勝な人間でもないけれど2024年は私にとってかなり考え方に影響を受けた年でした。

 

2025年が意味ある年になるように頑張って生きていこうと思います。

2024年はありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。